被災地出身の若い人たちへ


 

ベルテンポ・トラベル・アンドコンサルタンツの高萩徳宗(たかはぎのりとし)です。


2011年3月11日。私は出張先の札幌でめざめました。新千歳空港から羽田に戻り、出先で当社のスタッフとカフェで待ち合わせ、仕事の打ち合わせをしていました。
東京でも、私がいた場所は信じられない揺れでした。地球が割れると思いました。
自宅マンションもすべてのものが吹き飛び、生きた心地がしませんでした。

 

関東であれだけ揺れたのですから、東北で被災された方は、どれだけ怖かっただろうと思います。そしてテレビで報じられる津波の映像。

あれから長い月日が経ちました。福島の原発関連の報道も減り、ましてや宮城や岩手のようすなど、東京では知る由もありません。

 

2016年4月14日、16日に発生した熊本地震も本当に驚きました。
地震の一週間前、私はお客さまと大分、阿蘇、熊本を旅していたのです。
満開の桜に心を癒された私たちには、にわかに状況が理解できませんでした。

 

今、熊本や周辺の被災地の様子が東京で報道されることは、ほぼ皆無です。
昨年、熊本の友人を訪ね、被災地を訪問しましたが、西原村や益城町では、時間が止まったままだと感じました。

 

そして、2020年。新型コロナウィルスの猛威、熊本を始めとした水害。

 

●ベルテンポ・カレッジがお役に立てること

 

復興という言葉が使われますが、復興って、どこがゴールなのでしょうか。

元の生活を取り戻すこと?
仮設から自宅に戻れること?

 

門外漢の私が評論家のように偉そうなことをいう資格はありません。
角度を変えて、私に何が出来るのかをずっと考えていました。

 

そして、私に出来ることがあるとするならば、

 

考え方の提案
 一般的に考えられていることの「逆」からものを見る考え方を提言
・ビジネスとしての視点を提案
 いちばん欠けていることですが、これがないと続きません

 

この2点だと気が付きました。
もう少し具体的にお話しすると、こんなことをお伝えしたいと思っています。

 

<考え方>

1.復興ではなく、笑顔の数やありがとうの数を目標値にする

  大勢の観光客に来てもらって、お金を落して欲しい。
  ありがちな言い方ですが、ここには地域に住まう人の尊厳が感じられません。
  誤解を恐れずに言えば、「お金を落す」都会の人が優位で「お金を落して貰う」
  地域の人が助けて貰っている印象を受けます。

  私は正直、東日本震災の後、岩手の沿岸部に2度行ったきりです。
  熊本も1度だけ、宮城にも福島にも足を運べていません。

  行けないんです、実際には。
 
  もちろん、足を伸ばせるきっかけや時間のゆとりがある人にはどんどん現地に
  足を運んで欲しい。でも、行けない人が大多数。

  実際に足を運べない人にも、想いを繋いで欲しい。
  笑顔やありがとうを遠くからでも伝えたい。

  今は低コストで利用できるITのしくみがたくさんあります。
  小さな、本当に小さなビジネスモデルを作り、それを回しながら笑顔やありがとうを
  地域に循環させていきませんか。

 

2.遠方から人を呼ぼうとしない

 

  たとえば、岩手県に田老と言う町があります。
  震災による津波で集落は飲み込まれてしまいました。
  巨大防波堤が波にのまれた映像をご覧になられた方もいらっしゃるでしょう。
  震災の語り部のお話を何度も伺いました。
  日本のすべての人に聴いて頂きたいお話です。

 

  でも、遠いのです。
  そしてどんなに素晴らしく価値のあるお話しでも、やはり5回、10回と
  聴きに来るリピーターは少ない。

 

  私が地域の活性化を考えるときに、参考にしているのは岐阜県高山市の
  バリアフリー観光への取り組みです。
  20年以上前、土野守高山市長は、東京から観光客を呼ぶ前に、
  まずは高山に住む高齢者が家から出たくなる街を作れと号令を掛けました。

  遠方から「わざわざ」来てもらうのはとても難しいという前提で、
  「じゃあ、どう考えたら良いのか」を共に考えましょう。

 

  

<ビジネスの視点>

 

素晴らしい取り組みをされていても、ビジネスの視点が欠けていると継続できません。
被災地を元気にするには、笑顔の数を増やすには、小規模で良いので経済的観点から物事を考える必要があります。

 

1.顧客の創造

 

何かを始める前に、必ずやらなければいけないことがあります。それは顧客の創造です。
「もしも、この新しいサービスを始めたら、誰がこのサービスにお金を出してくれるのか」ここが具体的でないサービスを始めてはいけません。

 

砂漠の真ん中にコンビニを開いてはいけないように、あなたの想いだけで、何かを始めてはいけないのです。まずはお客さまを具体的にイメージしましょう。「地域に住むお年寄り」などという漠然とした状態ではダメです。小学校の裏に住む佐藤さん、三陸鉄道を退職してひとり暮らしをしている宮古さん、くらいまで具体化させてください。

 

 

2.キャッシュポイントを明確にする

 

良いことを始めようとする人ほど、お金を頂くことに後ろめたさを覚えます。
「このサービスにいくら払ってでも買いたいと思うか」を決めるのはあなたではありません。120%、お客さまの視点で、どのタイミングで何に、いくら払いたいと思うかを明確にしなければビジネスとしての成功はおぼつきません。

 


3.プロフェッショナルな仕事をする

 

たとえば大阪と言う場所は、日本一サービスに対してやかましい土地です。
私は大阪で商売をする勇気はありません。ある時、飲食店で会計をしている上沼恵美子みたいなおばちゃんがお店の人に「あんた、こんな商売してたらアカンで。」と言っている現場に遭遇しました。こわっ。
だから、大阪にはサービスのプロフェッショナルが多いのです。競争も激しいし、客単価も高くはない、でもサービスはかなりのレベルが求められる。田舎でのんびりと仕事がしたい人も、一度は大阪で修業をして、やかましい顧客の洗礼を受けることをお勧めします。私は遠慮しておきます。
言いたいことはひとつ。
「1円でもお金を貰ったらプロの仕事が要求される。」
顧客が障害者だからとか、高齢者だからと、半端な仕事をしてはいけません。
被災地だからと言う前提ではなく、質を追求して欲しいのです。

 

 

 

 


被災地という看板をおろしましょう

被災地とか、復興と言う言葉を冠にしてしまうと、サービス提供にも周囲の視線にもバイアスが掛かってしまうような気がしてなりません。
助けて貰うのではないですよね。魅力を研ぎ澄まして、人を元気にすることで、お金を受け取るのです。人口が少なくても、高齢者ばかりでもまったく問題ありません。
あなたの無限のアイディアを、しっかりと形にすれば、あなたが大好きなふるさとが笑顔いっぱいの町になります。

 

私はベルテンポ・カレッジを通じて、全力であなたの想いを応援します。